今から15年前に東京歯科大学市川総合病院に赴任した時、初めてドナーファミリーの集いに参加させていただきました。日頃、医師として患者さんに接し視力が改善して喜ぶ姿はみてきました。しかし、ドナーファミリーの集いで、角膜移植で視力を取り戻し日常生活が変わったこと、毎朝、角膜を提供してくださったドナーとご家族に感謝しているという患者さん自身の声を聞き、同時に、ドナーの方の生前のお考えやそれを聞いて提供を決断されたドナーファミリーの方の想いとその後の気持ちの変化を学ぶことができました。

以来15年、毎年参加させていただいていますが、私にとって、角膜医療に関わることの幸せを感じ、角膜移植に取り組む原点に返る大切な機会でありがたく思っています。見えることの喜びと感動、それを支える人と人のつながり。アイバンク活動は皆さまの温かい想いで支えられています。27年にわたり開催をご支援くださる皆さま方に心より感謝申し上げます。

「ドナーファミリーの集い®」は、角膜移植のドナーを想うことを目的に27年前から年に一度行われている集まりです。愛するご家族を亡くした直後に献眼の決意をされたご遺族のみならず、角膜移植を受けたレシピエント、移植の橋渡しをしたアイバンクコーディネーターやスタッフ、医師、看護師、さらにはアイバンク活動を支えてくださるライオンズクラブや行政の担当者などが一堂に集まり、それぞれの思いを率直に述べる機会が持たれます。

自分にとってこの集まりは、日々の忙しさの中でともすれば忘れがちになる医療従事者の原点を思い返させてくれる貴重な時間であり、毎年心が洗われる思いがします。今年も秋に開かれるこの集いが、参加される皆さまに有意義なひとときになることを祈っています。